下関中央法律事務所 

この1年間、当事務所が取り組んだ事件
その中でも特に注目された裁判を
ご報告いたします。


日韓高速船住民訴訟
安易な公金支出に歯止め!
全国に影響・流れ定着
山陽新幹線の安全を守れ!
保線工事の手抜き重大
下請け業者が提訴
 経営破綻した第三セクターの「日韓高速船」の債務処理に、下関市が約八億四千五百万円の補助金を支出したのは「公益性」がなく、地方自治法に違反すると、一九九四年夏、森澤昇さんらが亀田博市長(当時)に損害賠償を請求した住民訴訟。山口地裁では全面勝訴(九八年六月)、広島高裁でも「貸金返済分」三億八千万円については違法だと画期的な判決を出していました。

 二千五年十一月十日の最高裁判決は、貸金返済分についても違法性を認めず、形の上では住民敗訴となりました。しかし補助金支出は不法、不当とする裁判長の反対意見がつけられたうえ、判決じしんが「(市長が)裁量権を逸脱し、又は濫用したものと断ずべき程度に不合理なものであるということはできない」=つまり、「いいことではないが、損害賠償までは求めない」との趣旨にほかなりません。
 十一年半の裁判闘争の期間、全国の自治体が第三セクターへの安易な公金支出を止め、総務省(旧自治省)も二度にわたって公金支出を戒める通達を出すなど、原告の主張は国・地方の行政に定着。「最高裁判決で形の上ではまけたが、たたかいには勝った」画期的な住民訴訟でした。

 JR山陽新幹線の保線工事で、「手抜き」を強いられ、安全確保のため再工事を主張した業者が下請契約から外されるという事件が起きました。JR西日本と、その子会社レールテック(大阪市)によるこの不当なやり方を告発し、下請け外しをやめるよう提訴したのは、下松市の有限会社・旭工業の武田昭信社長。二千五年三月十一日です。
 手抜き工事は九十七年九月十一日、徳山駅から二、三キロ西で、レールテックの指示で行われました。レールを枕木に固定するボルトの締め具合を一本一本チェックせず、五千本以上の点検データを偽造。放置すると最悪の場合は、レールが外れる大惨事につながりかねないので、武田社長が何度も、「手直し工事をすべきだ」と求めたところ、次つぎ発注を削り、ついに〇五年四月から「下請けから外す」とJR側が報復を加えてきた事件です。
 武田社長は、レールテックとJR西日本に@旭工業の下請け外しをやめること。A発注削減など一千万円の損害を賠償することを求めています。コンプライアンス(法令順守)の立場から不法行為を告発した者に報復するJRなどのやり方は、今日の社会に通用するものではありません。

下関簡易裁判所判決
高齢者泣かせの業者
不当請求に慰謝料など
七十万円を支払え
地裁下関支部判決
下水道工事で家、傾く
下関市に賠償命令
 「弟の保証人になっただろう」「裁判所で被告席に立たされる」などと長期にわたって高齢者に不当な支払い請求を続けていた神戸市内の金融業者に、きびしい叱責の判決が下りました。「泣き寝入り」しないで、不当行為にたち向かう大事さを示すものです。
 訴えていたのは下関市内の七十代の男性。一九八六年一月下旬から二〇〇四年二月上旬まで十八年間、多いときには四十二万円を請求され、送りつけられた葉書は十通をこえていました。弟とは長年、音信不通なのに、「弟の連帯保証人になっている」とか、「裁判で差しおさえになり、即競売」などと脅されました。 
 下関簡裁は判決(二〇〇四年九月十日)で、金融業者の行為は、法律知識にうとい高齢者に長期にわたって多大な精神的苦痛を与えるものだと認定。慰謝料と弁護料の合計七十万円を男性に支払えと命じました。
 下水道工事のために家が傾き、擁壁にも亀裂ができた。と市内の男性Bさん(六十四)が下関市を相手に現状復帰の損害賠償を求めていた裁判で、二〇〇四年五月三十一日、地裁下関支部は、男性の訴えを認める判決を出しました。
 市は一九九七年十一月二十七日から二十九日、Bさんの家に隣接する市道で下水道を敷設。工事後、掘った穴の側面の鉄製の矢板を取り除いたため地盤沈下がすすみ、Bさんの家が傾くとともに、屋内の引き戸が開け閉めしにくくなったり、壁にヒビが入りました。
 判決は、「地盤の特性を把握し、影響を回避すべきだった」と下水道工事と家の傾斜の因果関係を認め、下関市に約千百六十万円の支払いを命じました。
同時に、Bさんの自宅が建つ土地は、工事以前から少しずつ地盤沈下していたとし、損害の賠償額は要求の半分にとどめました。

中国自動車道
排水施設に不備
と提訴 
斜面崩れ、養魚池汚染
 台風十四号の際、岩国市で山陽自動車道が崩壊し土砂に埋まって人が亡くなる事故が起きました(〇五年九月七日)。同じ日本道路公団が管理・運営する中国自動車道でも、排水施設の不備によると見られる斜面崩壊が発生し、昨年(〇五年)九月二十六日、近くの男性(五十六歳)が「汚水が流れ込んで錦鯉が死んだ」と道路公団に約五百五十八万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。
 崩壊の原因は、道路わきU字型排水路のつなぎ合わせが不十分で、そこから道路排水が漏水したためです。そして道路排水には、鉛などの重金属が含まれていたため、排水が流入した池で飼育されていた錦鯉約百匹が斃死しました。
 高速道の安全確保の上からも、あいつぐ崩落原因の徹底解明と、高速道路排水に含まれる有害物質の規制法の整備が急務です。