【2001年6月11日】

     日韓高速船住民訴訟控訴審判決についての弁護団声明

. 広島高等裁判所は、5月29日、元下関市長の日韓高速船株式会社への補助金交付についての住民訴訟事件において、一審の山口地方裁判所の判決から後退はしたものの3億8000万円の補助金交付について、明確に違法であり、元下関市長の少なくとも過失責任も認める画期的な判決を言い渡した。(認容額元金は3億4100万円)

. 破綻した第三セクターへの補助金交付を違法と認定した初めての高裁判決であり、全国的にみて同種訴訟のみならず、今後の第三セクターへの自治体の関与のあり方に指針となるきわめて意義深い判決である。

. 反面、この判決について、私たち一審原告(住民)、並びに弁護団は、以下の点において不十分さや曖昧さを残すものであることを指摘せざるを得ない。即ち、まず第一に、この判決は、地裁判決が、地方自治法232条の2にいう補助金交付が適法である為の「公益性」について示した「住民の利益・福祉との主観的及び客観的な因果関係」という明確な基準を明示していない点である。
   第二に、船会社への傭船料支払いの為の第一補助金と金融機関への支払いの為の第二補助金とで、違法性の判断を分け、第一補助金については、「元市長の裁量権の逸脱または濫用とまでは言えない」として違法との判断をしなかった点である。これらの不十分さや曖昧さは、地裁判決からの後退と評価しうるものである。

. しかし、私たちは、高裁判決は、これらの弱点を内包するものではあるが、その積極的に輝く意義や、我々がこの訴訟で目指してきたもの等からすれば、これを上告ないし、上告受理申立てにより、取消を求めるべき判決と評価すべきでないとの結論に至った。
   それは、以下の理由からである。
(1) 公益性概念について、明言をさけていることは、地裁判決の公益性概念を否定したものではなく、それを継承していると評価することも十分可能であること
(2) 地方自治法232条の2の公益性について、私たちも、長や議会がまず第一次的に判断する事を否定してきた訳ではなく、ただそれが、住民の利益や福祉の観点から客観的な枠があり、それを超えるかどうかについて司法審査が可能であると主張してきたもので、その点については、高裁判決も概ね認めていること
(3) 第一補助金については元市長の前任者の市長が市議会に諮ることなく船会社に、誓約書を出していた(このようなことは判決が十分戒めている)という前任者の政治的責任の重さを示す点や、交渉により船会社の請求金額が削減されたという点が存在し、それについて私たちは、元市長を免責させるに足るとまでは評価しないが、それらの点が第二補助金とは異なる判断要素として存在していることは事実であること
(4) 第二補助金については、明確に違法と認定し、元市長の少なくとも過失責任をも認めており、この意義はきわめて重要であること
(5) 私たちが、この訴訟を提起することで目指してきたのは、訴訟の内外で一貫して言ってきていたように、元市長一人に損害賠償責任を負わせることに主眼があったと言うよりは、自治体の第三セクターへの関与のあり方を根本的に問うというとであり、地裁判決後の1999年5月20日に旧自治省が、全国の自治体に対し、「第三セクターに関する指針について」と題する通知を出し、私たちが考え、かつ主張してきた内容に添う第三セクターに対する関与についての指針を全国の自治体に周知させ、それを又参考にすることを明言した上で高裁判決が出されており、これらが相俟って今後の全国の自治体の第三セクターへの関与のあり方について住民の利益に即した基本的指針が確立したと評価しうること
(6) 逆に、私たちが、上告ないし上告受理申立をすることになれば、高裁判決の主文において認容された金額に不服があるとの前提に立脚せざるを得ず、それは私たちが、この訴訟で目指してきたものとは必ずしも一致せず、この訴訟に関心を持っている市民や国民に対し、無用の誤解を与えかねないこと
  等である。

. 私たちは、これらの諸点を検討の結果、高裁判決の取消を求めて、上告及び上告受理の申立てをするよりも、この判決が一刻も早く確定することが重要であるとの結論に達したのである。

. 元市長側は、高裁判決に対して上告(又は、上告受理の申立)をしたが、これらは法律的に全く理由がなく、直ちに棄却(又は、不受理決定)されるものであると確信しているが、私たちは、万が一にでも高裁判決が取り消されることがないように、そして高裁判決が早急に確定するように、全力をあげるものであることを決意して、表明する。


戻る