No.特別号
2008年(平成20)7月15日発行
中国ブロック選出・山口県弁護士会
日弁連副会長 田川章次

[はし]らされる日弁連副会長
 早いもので、4月1日に本年度の中国弁連推薦の日弁連副会長に就任して3ヶ月半もの月日が過ぎました。引き継ぎは2月の下旬から始まり、3月からは勉強会や代議員会での次年度副会長受任挨拶等があって事実上専従体制に入りました。それを入れると、もう1ヶ月多くなります。この間の会務遂行状況については、毎月10日に、私が発行している「日弁連だより」に記載しているとおりです。
多忙とは聞いていましたが、これほどとは思いませんでした。
まさしく奔らされているという感じです。しかし、今まで経験したことの無いようなことが、次々と発生してきますので、新鮮な気持ちを持ち続けることができます。

 現執行部にとって最大の課題は、なんといっても法曹人口問題です。
今年度の司法試験発表の前までに緊急提言を行うということから、年度初めからプロジェクトチームを立ち上げ、その論議の状況を踏まえ正副会長会議でも最重要議題として審議をしてきました。
その結果を、6月理事会に「法曹人口問題に関する提言案」として議案提出しました。
この議案内容は、いろいろな方法で、会員の皆さんには伝えられていますが、その趣旨は「本年度司法試験の合否判定にあたっては、新しい法曹制度が未だ成熟途上にあることに鑑み、司法改革全体の統一的かつ調和のとれた実現を期するため、2010年頃に合格者3,000人程度にするという数値目標にとらわれることなく、法曹の質に十分配慮した慎重かつ厳格な審議がなされるべきである。」というものです。この議題に関する6月理事会の論議状況の一部は、私の日弁連だよりNO3で紹介しているところです。この問題については7月17、18の両日に開催される理事会で決定されることになります。
このほかにも、来年に迫った裁判員裁判、国選弁護費用の増額、当番弁護士基金といった課題や、10月に富山で開かれる人権大会の成功に向けての準備等課題は枚挙にいとまが無いほどです。13名の副会長は、年度初めに希望等に基づいて10 〜12程度の委員会を担当することになっており、私は下関での人権大会実行委員長を勤めた経験から、人権大会等人権問題を希望しましたが、その希望は叶えられませんでした。ただ、生活保護緊急対策委員会とそれに関する人権大会第3シンポジウム「労働と貧困」の部会が担当として割り当てられました。

 この部会では、ワーキングプアーの実態調査と問題点やその解決のための提言等を精力的に準備しています。この問題に関連するとも考えられるのが、6月8日東京秋葉原で発生した無差別殺傷事件です。この事件は、1997年9月27日に下関駅で発生した無差別殺傷事件の再現だと、日経新聞は社説で書いていました。
両事件とも仕事が失われるおそれから自暴自棄となって社会を逆恨みし、自動車と刃物で無差別に殺傷するという点が酷似しているからです、折りしも、6月13日午後午後1時30分 最高裁第2小法廷において、下関駅事件で1、2審死刑判決を受けている上部被告の弁論手続きが開かれることになっていました。被害者や遺族の皆さんが特別傍聴のため上京され、弁護団団長の私も正副会長会を抜けて同行しました。秋葉原の事件のこともあってか、マスコミからの取材が引きも切らない状態でした。そこで、最高裁の裁判後東京地裁の司法記者クラブで共同記者会見しましたが、40人もの記者と10台のテレビカメラが入り、騒然とした状況でした。
この場所で、私は、日弁連副会長として現在担当している「労働と貧困」問題で、働けども働けども将来に希望を見出せないワーキングプアーと言われる人たちの絶望感が社会への反撃として両事件が発生したのではないかという社会的背景があり、この点こそが解明される必要があると訴えました。

 私の担当の中心は国際関係です。国際人権、国際活動に関する協議会、拷問禁止条約に関する協議会等8委員会もあります。国際化の波は弁護士世界にも確実に訪れており、様々な問題が出ています。就任直後の4月11日には、国連拷問禁止委員会のメネンデスさんを迎えての国会内集会やシンポジウムの開催等大きな成果がありました。その後、5〜6月にかけ国連人権理事会の定期的普遍審査(UPR)があり、日弁連は、日本最大のNGOとして日弁連委員も発言の機会を与えられ、日弁連国際人権委員会が日本でバックアップ体制をとって会長声明や日弁連意見等を迅速に発表し、それらの成果として、日本政府が25の改善勧告に対し、9項目を拒否したほかは受け入れて改善するか前向きに対処する等の回答を引き出すことができました。その後6月以降には、国際交流が盛んです。6月24日にはドイツ連邦弁護士会が友好協定のため来会され調印式と歓迎の夕べを持ちました。また、7月11日にはアメリカ法曹協会(ABA)のメンバーが大挙来会され、意見交換会と歓迎懇親会がありました。懇親会は、アメリカ側の要望で東京タワーが見えるところということから愛宕タワービル最上階に設定され、夫人同伴の(私は一人でしたが)華やかなものでした。そして、7月18〜19日には、大阪で、三極会議と称してヨーロッパと中国の弁護士会との交流が控えています。10月のブエノスアイレスの国際法曹協会(IBA)の会議は、地元の中国弁連大会を理由に辞退しましたが、10月中旬ジュネーブで開かれる国際人権規約委員会の審査には日弁連代表団のキャップとして出席するよう要請されています。そのため、泥縄的でありますが、60の手習いよろしく英会話の勉強を始めました。
 以上のような生活で毎日忙しく動き回っております。おかげさまで、今のところ健康状態も良いようで、何とか任期を全うできるのではないかと思っております。
 終りに山口県弁の先生方のご健勝とご発展を祈っております。