No.10

2009年(平成21)2月10日発行
中国ブロック選出・山口県弁護士会
日弁連 副会長 田川章次


第10回理事会
 
2009年1月15日・16日
 日弁連17階会議室

多くの議題が審議され、報告も多くなされましたが、中国ブロックの会員にお伝えしたいのは、次のような点です。
(1)多重債務対策本部全体会議
宇都宮健児本部長代行
 今年は貸金業法改にとって重要な年である。貸金業法は4段階に分かれて施行されるが、完全施行は公布から3年後とされており、それが今年である。完全施行により多重債務は大幅に改善される。
 金利が年20%に引き下げられ、グレーゾーンが撤廃され、総量規制が実施される。
しかし、昨今の経済情勢をみると中小企業の倒産が相次いでおり、これをきっかけに業界に改正法施行見直しの動きが出ている。改正法では完全施行前に規制見直しをすることとなっており、業界はここで攻勢をかけようとしている。
市民団体を巻き込んで巻き返しを許さない運動を展開すべきである。
個人、中小企業に対してはセーフティネットが遅れているので、この点の取組みを進めるべきで、超党派多重債務問題対策議員連盟に対し再結成を働きかける必要がある。
当初の趣旨に則った完全施行を求める運動を進めたい。
さらに、離職者に対してはハローワークで相談すれば労金融資がセーフティネットになる。弁護士による任意整理がなされるなら融資可能とされている。これも弁護士会に対応をお願いしてセーフティネットを築いていただきたい。
(2)リーフレット作成
「国連人権理事会は日本政府になにを求めたか」の件
田川副会長
 標題のリーフレットを作成したのは、昨年来、様々な勧告が国際機関から出ている。これらについて日弁連内外の理解を得るため、本日理事会で配布したリーフレットを作成した。
昨年5月の人権理事会審査(UPR)、10月の国際人権・自由権規約委員会審査(CCPR)とその総括所見を会員に理解してもらいたい。
UPR審査は人権理事会が加盟国の人権状況の審査を行うものであるが、同じ加盟国同士による評価であり、他国政府が発言し勧告するのが特徴である。
昨年、日本に対して初めての審査が行われた。日本政府は13の勧告を受け入れ、4つについて検討を約束し、9つについて受け入れなかった。今後は、勧告をフォローアップし、国内人権の増強改善に活用していくことになる。
(3)新しい法曹養成制度の改善方策に関する提言案の件
 執行部より、法科大学院の定員数を当面4,000名程度にまで逓減する必要があり、学校数の削減については、それ自体に言及することよりも連携その他の方法を掲げた。
また、問題がある法科大学院について、質・量共に教員を確保できない困難な状態にあるものは、他の法科大学院との提携、統合、募集を停止するべきであるが、それは各法科大学院が自主的に決めるべきだとの付言がなされた。
(4)61期弁護士(12月18日一括登録)の登録状況等について
小寺正史本部長代行
 昨年度は裁判官118名であるところ、今回は75名。検察官は今回73名。判検で予想より40名くらい少なかった。
裁判所に聞いたところ、定員を少なくしたわけではない、特別の意図はない、との回答であった。
また、検察庁に聞いたところ、昨年が多かっただけで、今回特に少ないわけではないとのこと。裁判官について、100名を割ったことは初めてで困ったものだと思ったが、特段の理由はないようだ。
支部の問題もある。検察官、裁判官の増員は必要であるので、引き続き求めていきたい。企業等の組織内に就職したと思われる者については、60期は現新合わせて28人であったが、今回は63名。業種も多様。今後、企業の採用は増えていくことが見込まれる。
(5)留置施設における面会室の増設要望書案の件
 執行部より、理事からの要望をふまえて取り組み、1月9日に警察庁を事前打診で訪問し、協議したところ、施設の新設をする場合は国から補助金があり、警察庁も関与できるが、現行施設を分割のために改修する場合には国からのお金は出ず、都道府県になるので警察庁としては関与できないといった事情もあることが判った。
 新しい施設をつくる際には必ず2室以上にしているらしい。
しかし、既存施設については、現状では面会が困難になっているという事情を具体的に提示して各地で詰めて欲しい。ひとつの部屋を分けるというのは声が聞こえる、などの問題もあるが、当面は、全く接見できないよりはいい、という考えである。
(6)意見交換「法曹人口問題に関する件
 村山副会長より、次のような発言があった。1月29日の法曹人口問題検討会議でとりまとめをする予定であり、現在最終とりまとめをしている段階である。とりまとめの後、執行部で案を決定し、2月・3月の理事会でご承認いただきたいと考えている。そこで、本日は、この執行部案作成に当たって理事の皆さんの意見を求めたい。
その後、各理事会から各単位会の論議を踏まえ、さまざまな意見が出され、活発な論議が進められた。田川章次の現在の意見については、香港視察により、考えたことを報告書にまとめており、その第3項が法曹人口に関するものなので、この頁に掲載する。みなさんのご意見を仰ぎたい。
日本の弁護士、海外に目をむけよう
●香港リーガルイヤーに参加して・・・1●
 今回の香港訪問で多くの国からの代表団と話し合いの機会をもつことが出来ました。
その会話の中で、各国とも法曹人口問題が大きな関心事であることが判りました。
この問題は、日弁連の現執行部にとっても焦眉の課題であることから、各国の状況を踏まえその点について検討したいと思います。
 21名にものぼる大代表団を送ってきたチェコでは、人口が約1,000万人のところ弁護士は9,000人(弁護士1人当たり国民1,111人)で、毎年1,000人がロースクールを卒業してくる(11.1%増)のだという。
ここで、いわゆる先進国といわれる諸外国をみると、イギリス、人口約5,400万人、弁護士数11万6,000人(弁護士1人当たり同463人)。アメリカ、人口約3億人、弁護士数106万人(弁護士1人当たり同281人)。ドイツ、人口約8,230万人、弁護士数14万7,000人(弁護士1人当たり同463人)。フランス、人口約6,153万人、弁護士数4万5,000人(弁護士1人当たり同1,363人)。そして、お隣の韓国は、人口が約4,900万人、弁護士数8,400人(弁護士1人当たり同5,833人)、今年の司法修習修了者は1,000名で、判検事および軍隊で35%、法律事務所に就職した者が20%で、未だ45%も職が決まっていないという。昨年の同時期は35%だったが、その後全員職がみつかったそうである。今後、ロースクール設立後は毎年2,000人宛(25%)増加になるとのことで、人口との関係でいうと後述する日本の11.5%の倍以上の速さで法曹人口増が進められることになります。
 一方、日本は現在人口1億2,800万人、弁護士数2万6,000人(弁護士1人当たり同4,923人)、この1、2年の新人弁護士数は2,200人(8.4%増)程度です。そして、弁護士総数5万人(弁護士1人当たり同2,560人)、年間3,000人(11.5%増)増の目標の是非が論じられていますが、この法曹人口増加によって最終的な日本の法曹人口は約50年後に13万人程度になるとシミュレーションされています。その最大の法曹人口になった時点で、弁護士1人当たりの国民数が1,000人程度になるようです。
現在の弁護士1人当たり国民数4,923人が、10年後の2018年頃に一つの目標値である5万人に到達すると、その時点で弁護士1人当たり2560人となり、50年後に最大の13万人(弁護士1人当たり同1,000人)にと漸増していくわけです。
これを見ると、日本の弁護士は諸外国の弁護士に比べ、如何に恵まれた環境のもとで過ごしているのか理解して頂けるのではないでしょうか。
諸外国の弁護士から、「井の中の蛙 大海を知らず。」とのそしりを受けそうです。そこで、私は、日本の弁護士に「自らの恵まれた立場を自覚し、もっと世界に目を見開いて外に打って出るべし。」と言いたいのです。
●香港リーガルイヤーに参加して・・・2●

2009(平成21)年1月12日から13日にかけての香港におけるリーガルイヤーの行事に、香港 律師会の招待で宮崎会長に同行参加して来ました。
 そこで、この行事に参加して感じた三点について述べます。

1)香港おそるべし

まず、変貌する国際都市香港について。
私は、今回が3回目の香港訪問ですが、最初は20余年前で、未だ空港が香港の摩天楼の真ん中にあり曲芸のように着陸するという時代でした。
 その頃の香港の街は、ブルースリー登場・カンフー映画の背景たる混沌とした魔窟のような感じでした。母と女性事務員2人を連れ桂林に行く途中だったので、無事通過帰国できればと思いました。
 2回目は、10年前に妻とスイスに行く際に立ち寄り、帰国の際に九龍のホテルで一泊しました。新国際空港が出来たばかりで、新設の高速鉄道のトラブルで遅れた記憶があります。
前年1997年中国に返還され1国2制度の体制がスタートしたばかりでした。
九龍の新しい繁華街は、近代的な商業施設が次々と建設され賑やかで、人々の顔にも活気がありました。
 今回の訪問では、劇的ともいうべき変化が香港の街と人々に発生していることを実感させられました。
高層ビルが急な崖にそって競り上がるように林立し、その下の街路を2階建てのトラムやバスが通っている風景は何か近未来を思わせるような風景でした。
何よりも人々の表情が大きく変わってきたなと感じました。
私達が多く見たのは、香港中心のビジネス街を往き来するハイクラスの人たちでしたが、香港入国の夜に一行で海鮮料理を食べに行った西貢(サイクン)は昔「たんみん」と呼ばれる水上生活者が多い港町だったのに、ここの人々も大きく変わり、水上生活者は激減し、船も木製ジャンクは殆どななくなってFRP製の近代的なものになっていました。
 この変化の極め付きは、二日目の午後に案内された反腐敗独立委員会でした。
70年代ごろまで香港では汚職が横行し、賄賂を渡さなければ救急車にも乗せて貰えない、医師の診察も受けられないという状況だったのが、警察官の不正に怒った民衆の不満をきっかけとして警察から独立した汚職追放の組織としてつくられたのだそうです。
 この大きな変化は驚きに値すると思いました。
私は、ほぼ10年ごとに香港を訪れて、その変容ぶりを、目にしたことになります。
今、香港は中国に返還され、中国の表門になろうと懸命の努力をしているのだなと実感し、今後に向けて「香港おそるべし。」という思いを抱きました。

2)香港弁護士侮るべからず、学ぶべし

次に、香港の弁護士を含む法律家について述べます。
香港は、イギリスの植民地だったので、宗主国イギリスの法律制度が採用され、法律家のあり方もイギリス同様の仕組みです。
法曹一元制度も採用され、その基礎となるのがソリシターです。
そのソリシターの中からバリスターが試験等によって登用されるようです。この両者は、いずれも弁護士といわれますが、ソリシターはビジネス弁護士、バリスターは法廷弁護士と訳されています。この両者の区別は、捜査検事と公判検事のちがいといえば理解して頂けるかもしれません。
本番のリーガルイヤーの行事は、12日16時より香港のシティホールで、ティーレセプション(茶会)から始まりました。香港の弁護士たちは、馬の毛でつくったというカツラ(それも長いのや、中位の、短いのと三種類あります。)を付け黒い法服に長靴下といういでたちでした。17時、いよいよハイライトのオープンセレモニーの始まりです。
 終審法院首席法官(最高裁長官)を初めとする法官150名位が居並ぶ前を、パグパイブを先頭にした音楽隊の後を、衛兵50人位が小銃を担いで行進し、最後に式壇の上にたつ最高裁長官に捧げ銃をした後に音楽隊に続いて退場するという閲兵式がありました。
 翌日は、ソリシターとバリスターの協会での懇談や裁判所見学等をしました。
これら一連の香港での見学を終え、香港の弁護士の将来について考えました。
今、香港の弁護士は、過去と現在が入り交じった状況にあり、中国の一部として未来にどのような展望を開くべきか方向を探っている過渡期にあるのだと思います。
その時、12億の民を背にしていることは今後の大きな需要を期待しうる立場にあり、その中国が世界に出て行くゲートウェイとしての役割を果たすのだという自覚があって、彼らが英語を日常語として使用しているという点で非常に有利な立場にあります。
そういう点で、香港の弁護士は現在の混沌たる状況を解決して抜け出し、その経験を武器として世界に大きく飛躍する可能性を持っていると感じられました。
「香港の弁護士、侮るべからず。学ぶべし。」と強く感じました。